ペルソナとは何か? なぜマーケティングで重要なのか?
「うちのサイトのターゲットは、30代から40代のビジネスパーソンです」 このようなターゲット設定は、多くの企業で行われていますよね。しかし、この設定だけでは、チームのメンバーはそれぞれ、全く違う人物像を思い描いているかもしれません。
ある人は「都心で働く、ITリテラシーの高い32歳の男性」をイメージし、またある人は「地方都市で働く、管理職の45歳の女性」をイメージする。これでは、Webサイトのデザインやメッセージの方向性がバラバラになってしまうのも無理はありません。
そこで登場するのが「ペルソナ」です。 ペルソナとは、前回の記事でも少し触れましたが、ユーザー調査のデータに基づいて作られる、架空でありながらも非常にリアルな顧客像のことです。
【ペルソナの例】
- 氏名: 渡辺 優子(わたなべ ゆうこ)
- 年齢: 34歳
- 職業: 中堅食品メーカーのマーケティング担当(主任)
- 居住地: 横浜市在住、都内へ通勤
- 家族構成: 夫と二人暮らし
- ITスキル: 仕事で各種ツールを使いこなし、情報収集はスマホが中心。
- 性格・価値観: 効率重視でタイムパフォーマンスを気にする。新しいもの好きだが、購入の際は口コミや評判をしっかり調べる慎重派。
- 抱えている課題: 「Web広告の費用対効果を上げるよう上司から言われているが、何から手をつければいいか分からず、情報収集に時間がかかっている」
いかがでしょうか。単なる「30代女性」よりも、渡辺さんの顔や日常が目に浮かぶようではありませんか? このように具体的な人物像を設定することで、チーム全員が「渡辺さん」という同じ顧客イメージを共有できるようになります。「この機能は、渡辺さんにとって本当に必要だろうか?」「この言葉遣いは、渡辺さんに響くだろうか?」といったように、ペルソナが全ての意思決定の”ものさし”となり、施策のブレをなくしてくれるのです。
【3ステップで完成】実践的なペルソナ作成フロー
ペルソナは、決して担当者の「創作」であってはいけません。必ず、前回の記事で紹介したようなユーザー調査(特にインタビュー)の事実に基づいて作成します。
- ステップ1:ユーザー情報を整理し、共通項を見つける
インタビューで得られた発言や属性情報(年齢、職業、課題など)を、付箋などに書き出して洗い出します。そして、それらの情報を眺めながら、似たような価値観や行動パターンを持つユーザーでグループ分けをしていきます。 - ステップ2:グループを代表する人物像を構築する
最もビジネスのターゲットとして重要だと思われるグループを選び、そのグループの特徴を凝縮した一人の人物像を具体的に作り上げていきます。名前を付け、顔写真(フリー素材などでOK)を用意すると、よりリアルな存在として認識しやすくなります。 - ステップ3:ストーリーを描き、完成させる
その人物が、どのような背景を持ち、どんな課題に直面しているのかを、短いストーリーとしてまとめます。特に「なぜ、私たちのサービスを必要とするのか?」という動機やシナリオを明確にすることが重要です。

良いペルソナ、悪いペルソナの見分け方
せっかくペルソナを作っても、それが活用されなければ意味がありません。ここでは、プロジェクトで「使える」良いペルソナの条件をいくつかご紹介します。
- 具体的で、行動や感情がイメージできるか?
「情報収集をしている」だけでなく、「通勤電車の中で、スマホでニュースアプリとSNSをチェックしている」のように、具体的なシーンが目に浮かぶものが良いペルソナです。 - チームの誰もが「いそうだよね」と共感できるか?
あまりに極端だったり、都合の良い特徴ばかりを盛り込んだりすると、チームの共感を得られず、使われないペルソナになってしまいます。 - 意思決定の役に立つか?
ペルソナが抱える課題やニーズが、自社のビジネス課題としっかり結びついていることが重要です。ペルソナの課題を解決することが、ビジネスの成功に繋がるような設計になっているかを確認しましょう。
ペルソナを社内で浸透させ、活用するためのヒント
作成したペルソナは、ただの書類として保管しておくだけでは宝の持ち腐れです。
- 印刷して、いつでも見える場所に貼っておく
- 会議の最初に「渡辺さんの課題は…」と、ペルソナの名前を主語にして話す
- 新しいメンバーには、必ずペルソナの説明から始める
このように、日常的にペルソナに触れる機会を増やすことで、徐々にチームの共通言語となり、自然と顧客視点が根付いていきます。
まとめ:ペルソナは、顧客視点を保つための”羅針盤”
今回は、チームの目線を一つにし、施策の精度を高める「ペルソナ」の作り方と活用法について解説しました。
- ペルソナとは、調査データに基づくリアルな架空の顧客像。
- チーム全員で同じ顧客イメージを共有し、意思決定のブレをなくす。
- ペルソナ作りは、調査→整理→構築の3ステップで進める。
- 作成したペルソナは、日常的に活用してこそ意味がある。
航海の際に羅針盤がなければ、船がどこに向かっているか分からなくなるように、ビジネスにおいてもペルソナという羅針盤がなければ、いつの間にか顧客不在の「自己満足」な航路に迷い込んでしまいます。
さて、ペルソナという「誰に」届けるかが明確になったら、次はその人が「どのように」サービスと出会い、関わっていくのかを考える必要があります。 次回は、顧客の行動と感情を時系列で可視化する「カスタマージャーニーマップ」の作り方をご紹介します。