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Adobe MAX Japan 2018レポート

コンピューターを使えば、世界のどこでも仕事ができるのではないか?と思って早20年。。
「超」がつくほどのアナログ家庭で育った私に、訳もわからずiMacを買い与えてくれた両親には感謝しかありません。
その日から今日まで、「世界のどこでも仕事ができる」はいわば私のモチベーション、スローガンにさえなっています。

この背景には確実にApple製品とAdobe製品が存在し、両社の毎年のアップデートに心踊るのは私だけではないはずです。

今回のAdobeMAXではこの2ブランドが協力なタッグを組み、同じイベントに登壇するという個人的に胸アツなシーンと共に前回以上にてんこ盛りの新製品発表となったKEYNOTEをはじめ、参加したセッションで感じた事などをまとめてレポートとしたいと思います。

やはり神だった。Adobe senseiの御技

全世界のクリエイターのクリエイションを吸収し、理解し、我々に恩恵をもたらす。…これは先生ではなく神である。(Megumi.T)

去年の発表で衝撃的なデビューを果たしたAdobe senseiですが、今年の発表では、2Dの枠を超え、動画、3Dといったソフトでも採用されるというのがメインテーマとなりました。

一番重要であると思うオブジェクトをAdobe senseiが認識し、こちらの意図を汲んでマスクしたり、追従したりできるようになるとのことで、下ごしらえのような地道な作業の大幅な時間短縮が可能になりました。

実際のデモを見るとsenseiはパワーアップしまくりで、sneak(開発段階のデモ)まで含めたら笑うしかないくらいの機能を搭載しはじめました。レタッチもマスク作業も過去のものになる日がくるのでしょうか。すごいです。。

iPadder歓喜! Photoshop for iPad発表

もうすでに色々なところで話題になっていますが、今回AdobeとAppleがタッグを組み、30年の間に歴史もコードも重く蓄積されたPhotoshopを、コードから見直し作り上げたというPhotoshop for iPadが発表となりました。(リリースは2019年です)

強調されたのは、「ipad用に単純化された機能のもの」「廉価版」といった類のものではなく、デスクトップ版と変わらないPhotoshopであるという事。

デスクトップでも容量的にへこたれることが多いほど、データが蓄積した状態のphotoshopを、iPad版にするには、お互いの協力が不可欠であり、今回それが実現したという内容で、熱いパッションに打たれまんまと会場にいる誰もが新型iPadが欲しくなるという術中にハマりました。

XDの進化に毎月痺れる!

XDをβ版時代から採用している弊社では、毎月「それほしかったの!」的な機能追加に狂喜乱舞していたわけですが、もはやXDは弊社のワークフローをも飛び越え、今ではAdobeを代表する製品へと進化してしまいました。

今回は、スタイリッシュなアニメーション遷移が可能となったオートアニメーション機能、欲しい機能を追加できるプラグイン機能、そして音声認識に対応したプロトタイプ作成ができるようになったという3点が主要アップデートの紹介でした。

エンジニア的には…? プロトタイプを越えたオートアニメーション機能

プロトタイプとしての画面遷移に、スタイリッシュなアニメーションをつけられるようになりました。ダイナミックに動くデモを見て、感心すると共に、エンジニア目線で見ると、ちょっと心配にも。プロトタイプのアニメーションが美しすぎて、実際の開発段階でそれを再現できるか?っていう問題は発生しないのでしょうか?
スタイリッシュなアニメーションは、一つ一つのスムージング/イージングの細かい数値設定が命。実際の開発現場ではどこまで対応できるか?というのは、課題になってきそうです。早い段階で、今後のアップデートやプラグインで解決策が出るといいなと思いました。

※他のXDセッション内でアニメーションコードの開発のお話があったそうなので、やはり今後に期待ですね!

そしてプラグイン機能は、実はまだ私も未体験。
セッションの中で紹介されていたプラグインでとても良さそうだった2つのリンクを貼っておきます。

  • Google spread sheetの情報を読み込めるようになるプラグイン「Google Sheets for XD」

    画像やテキストをスプレッドシートからそのまま流し込みできるようになるという画期的プラグインです。
    https://googlesheetsforadobexd.impekable.com/

  • ユーザーフローが作成できる「overflow」

    XDで作成した画面にデバイススキンを追加し、さらに画面遷移説明付きで吐き出せるディレクター感涙のプラグイン
    https://overflow.io/

他にもcsvからグラフを吐き出してくれるものや、アートボードをいい感じにリサイズしてくれるものなど、使ってみたいプラグインが多数あるので、少しづつでも取り入れていきたいと思います。

アプリ開発者感涙 音声UXもプロトタイプ対応に

プログラムの知識不要。ページ遷移と同じアクションで音声認識対応のサービス設計ができちゃいます。ちなみに日本語対応は今後のアップデートになるという事でした。

XD愛が強い竹下は、今後もワクワクしながらXD情報をチェックし続けます…!

https://www.adobe.com/jp/products/xd.html

絵師に激震 Project Geminiはアナログ人間もトリコにする

アメリカのAdobe Maxで衝撃的な発表となったProject Gemini(ジェムナイ)という開発中ドローイングアプリのセッションが、世界初という形で今回のAdobe MAX Japanでありましたので、参加してきました。

Geminiは、「イラレとフォトショが一緒になった」という表現がされていますが、要は、ベクターとピクセルを同データに混同させドローイングができるというのがこのGeminiの最大のウリなのです。

有名絵師、和遥キナさんのライブドローイングを見ながら機能が説明されていくというセッションでした。

和遥さんはこのproject Geminiの日本向けエバンジェリストの一人であり、クリエイター目線での意見をAdobeサイドに伝えるというお役目をしているそうです。

まだプロジェクト段階ということで、出力データのやりとりや互換性などの詳細は決まっていないそうですが、ドローイング画面に関してはライブやデモを触った限り、かなり完成に近づいてきているという印象でした。

デモを触った感想:

  • 油絵の質感がかなりリアル。混色や上乗せなどの絵の具の量まで調節できるので自由度が高く、画面で載せる感触はとても気持ちが良い
  • ベクターブラシからピクセルブラシに変更すると、自動でレイヤー分けしてくれるので混在はしない。
  • 水彩のにじみ機能はAdobe sketchでできた擬似的なものからさらに混色具合がリアルになった印象。
  • 新型iPad proでのデモだったので、12.9インチの1TB版が欲しくなった(どうでもいいですね)

https://blogs.adobe.com/japan/dtp-introducing-project-gemini/

その他イベント全体のメモ

  • 去年よりも入場がスムーズになって、イベント側の努力を感じました。お疲れ様でした。
  • グッズ売り場も整理券を採用し、前回よりもスムーズな印象でした。(買えなかったけども)
  • モバイルバッテリーを忘れ、買うこともできたけど悔しい気持ちに。充電ブースもあるのですが、ちょっと混雑気味なので次回は絶対持参します。
  • 去年よりもレクリエーション感が強くなった気がしました。スタンプラリーやおみくじなど参加しやすいものは、私のようにソロで行ってインスタブースで写真を撮らない人間にはありがたかったです。Aiバッジが当たりましたが、XDかPSバッジがよかったです。

まとめ

職種という肩書きが薄まる世界へ

WEBデザインやイラストレーション、コーディングなど開発部門にも携わる一方、webディレクターという立場でもあるため、今回はAdobe製品のセッションの他に、マーケターやディレクターといったビジネスサイドからのお話も聞いてきました。
職種は違っていてもAdobe creative cloud製品は活用できるという視点のお話や、ワークフローを効率化していくことの重要性など、クリエイター側から見るとつい忘れてしまう部分のお話を聞けたかなと思います。

中でも普段、Adobeのマーケティング製品Adobe experience cloudの方のお話では、クリエイターと企画部門との認識相違を埋めるためにXDを利用するということでしたが、これは違う側面から見ると、マーケターの仕事でもクリエイター目線での資料作成が必要だと感じ始めたという事ですし、クリエイターも企画側が何を意図しているのかをもっとプロジェクトの上流から把握する必要があるという事だと思います。

大規模なプロジェクトですと、役割が細分化され、全体を把握する意識が薄れる事がありますが、小規模プロジェクトであれば、「全体を見る事ができる人がいる」ではなく、「全員が全体を把握している」というのが一番効率が良いワークフローだと感じます。

実現するために手っ取り早いのは全員がクリエイティブな意識を持つ事ですが、究極はそれを意識せずとも使えるようになっている事。職種の垣根を超えて思考できるワークフローが確立できるようにする事だと思いました。

Adobe senseiの降臨により、マーケターが適当に(←ここ大事)photoshopでプレゼン素材を用意できたり、製造業の所長がipadでリタッチしながら完成イメージの指示を出す事だって可能に。どの職種にもクリエイティブは存在する。そういう時代がくると思うと、オラ、ワクワクすっぞ!って感じです。

(…はっ!これを言わせるためのゲストだったのかあれは!)

効率化とクリエイティブは対立しない

beigeの枌谷さんのセッションの中で、「極限まで効率化をしてしまったら、クリエイティブが死んでしまうのではないか?と質問されることがある」とおっしゃっていました。実際はその逆で、非クリエイティブな時間の効率化を徹底的におこなっていくことで、クリエイティブに当てる時間が作られるのだということでしたが、これはまさにAdobeの製品が目指すところとリンクするお話だと思いました。

クリエイターの仕事は、クリエイティブではない仕事が半分以上を占めていると言っても過言ではありません。基本的に作業が好きなクリエイターは、無駄だとも思わずに手を動かしている箇所が、実は多数存在しているんじゃないかと思うのです。

こういったイベントに参加すると、新しい技術を知り、今までやっていたことが実は相当な手間だったということに気づける良い機会になるなと思いますので、まだAdobe Maxに参加されたことのないクリエイターのみなさん(できたら違う職種の方も!)は、来年は是非参加してみてください。

  
     

MEGUMI TAKESHITA

Director / UI Designer

隙あらば旅に出たい