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第1回:なぜあなたのWebサイトは「問い合わせ」に繋がらないのか?ビジネスマンの多くが知らないUXの重要性

顧客に選ばれ、 事業を成長させるための UXデザイン戦略入門

はじめに:アクセスはあるのに、なぜか売上が伸びない

「Webサイトをリニューアルして、見た目もすごくキレイになった。広告からのアクセスも順調。…なのに、肝心の問い合わせや購入といった”成果”にだけ、なぜか繋がらない。」

Webサイトの運用を担当していると、こんな風に首をかしげた経験はありませんか?

時間もコストもかけたのに、なんだか空回りしているような、もどかしい気持ちになりますよね。その成果が出ない原因、もしかしたらデザインや機能といった”目に見える”部分だけにあるとは限らないのかもしれません。

実は、多くのWebサイトでは、訪れたユーザーとサービスの間に、作り手側も気づかぬうちに「見えない壁」ができてしまっています。ユーザーはその壁にぶつかると、静かにサイトを去ってしまうのです。

この連載では、そんな「見えない壁」の正体を突き止め、あなたのWebサイトを本来の目的である”成果を生む”ための強力なツールに変える鍵、「UX(ユーザー体験)」について、全12回にわたって一緒に考えていきたいと思います。

UX(ユーザー体験)とは何か? UIとの違いを1分で理解する

「UX」という言葉を聞いたことはあっても、正しく説明できる方は意外と少ないかもしれません。よく「UI」と混同されがちですが、この二つは似ているようで全く異なる概念です。

UI(ユーザーインターフェース)とは、User Interfaceの略で、ユーザーと製品・サービスが接する「接点」のことです。Webサイトで言えば、ユーザーが見る画面のデザイン、ボタンの形や色、文字のフォントなどがUIにあたります。

一方、UX(ユーザー体験)とは、User Experienceの略で、一つの製品・サービスを通じてユーザーが感じる「体験のすべて」を指します。

例えば、レストランで考えてみましょう。 メニューのデザインやレイアウトの美しさ(UI)も大切ですが、それだけでは「良い店」とは言えません。「店の見つけやすさ」「店内の雰囲気」「店員さんの接客態度」「料理の味」「注文のしやすさ」「会計のスムーズさ」といった、来店前から退店後までの一連の体験すべてが合わさって、顧客の高い満足度、つまり「良いUX」が生まれます。

Webサイトも同様です。ボタンがかっこいい(UIが良い)だけでは不十分で、「サイトがすぐに見つかるか」「欲しい情報は探しやすいか」「ページの表示速度は快適か」「問い合わせフォームは入力しやすいか」「購入後のフォローは丁寧か」といった、ユーザーがサイトで目的を達成するまでの全プロセスがUXなのです。

つまり、UIはUXを構成する一部分に過ぎません。ビジネスの成果を上げるには、部分的なデザイン(UI)だけでなく、全体的な体験(UX)を設計する視点が不可欠です。

ビジネスの成果を左右する3つのUX要素

では、「良いUX」とは具体的にどのような要素で構成されているのでしょうか。ビジネスの成果に直結する代表的な3つの要素をご紹介します。

  1. 使いやすさ(Usability) ユーザーが「目的をストレスなく達成できるか」という要素です。例えば、「探している情報がすぐに見つかる」「操作方法が直感的で迷わない」「入力フォームでエラーが起きにくい」といった点です。使いづらいサイトは、ユーザーが途中で諦めて離脱する原因に直結します。
  2. 分かりやすさ(Clarity) ユーザーが「このサイトが何を提供していて、自分にどんなメリットがあり、次に何をすればいいか」を瞬時に理解できるか、という要素です。専門用語が多すぎたり、どこをクリックすればいいか分からなかったりすると、ユーザーは不安を感じ、信頼が失われてしまいます。
  3. 心地よさ・満足度(Pleasure/Satisfaction) 目的を達成できるだけでなく、「使っていて気持ちが良い」「また利用したい」と感じる情緒的な要素です。ブランドイメージに合った美しいデザイン、スムーズな操作感、ユーザーの課題を的確に解決してくれるコンテンツなどが、満足度を高め、リピート利用や口コミといった長期的なファン化に繋がります。

これらの要素が一つでも欠けていると、ユーザーは「見えない壁」を感じ、あなたのサイトから静かに去ってしまうのです。

【事例】顧客はどこで離脱する?UXで失敗したECサイトの例

あるアパレル企業が、満を持してECサイトを立ち上げました。最新のデザインを取り入れ、プロのカメラマンが撮影した商品写真も豊富に用意しました。しかし、売上は一向に目標に届きません。アクセス解析を見ると、多くのユーザーが商品をカートに入れた後、購入に至らずにサイトを離れていることが分かりました。

原因を調査すると、いくつかのUX上の問題点が浮かび上がりました。

  • 問題点1:購入に「必須の会員登録」が煩雑だった 購入ボタンを押すと、入力項目が20以上もある会員登録フォームが表示されました。「今すぐ欲しい」と思っているユーザーにとって、これは高すぎるハードルでした。
  • 問題点2:送料や支払い方法が最後の画面まで分からなかった ユーザーは「送料はいくらかかるのか」「使える決済方法は何か」といった重要な情報を知りたいのに、それが購入手続きの最終段階まで明示されていませんでした。この情報不透明さが、ユーザーの不安を煽り、離脱に繋がっていました。

このサイトは、見た目(UI)はきれいでしたが、ユーザーが購入するまでの体験(UX)に全く配慮ができていませんでした。その結果、最も利益に繋がるはずの購入寸前のユーザーを、みすみす逃してしまっていたのです。

まとめ:お客様の声を聞く、その一歩先へ。UXデザインはコストではなく、未来への「投資」です。

今回は、Webサイトが成果を生まない根本的な原因として「UX」の重要性について解説しました。

  • 成果が出ない原因は、ユーザー体験(UX)にあるかもしれない
  • UIは部品、UXは体験全体
  • 「使いやすさ」「分かりやすさ」「満足度」がビジネス成果を左右する

Webサイトの見た目を整えることや、新しい機能を追加することは、もちろん重要です。しかし、それらがユーザーにとって使いやすく、分かりやすいものでなければ、かけたコストは無駄になってしまいます。

UXを改善することは、単なる「改修費用」ではありません。顧客との関係を良好にし、企業のブランド価値を高め、持続的なビジネス成長を実現するための「未来への戦略的な投資」です。

では、具体的にどうすれば自社のサイトのUXを改善できるのでしょうか? 次回は、その第一歩となる「顧客目線でビジネスを考える方法」について、さらに詳しく解説していきます。

  
     

YOICHI TAKAYAMA

CEO/DIRECTOR

物事を整理して、隠れていた正解を見つけることに悦楽を覚えるタイプのUXデザインが大好きなWEBディレクター兼PM。 京都外国語大学外国語学部日本語学科卒。卒業後に上京し、システム開発会社を経てセガサミーグループに入社。コミュニティサイトやサービスサイトの企画立案、ユーザー調査、アクセス分析、ディレクション業務に従事した後、株式会社キャンビーザライトを設立。 設立後は、大小様々な会社のECサイト、サービスサイト、オウンドメディアなどのWEB制作やUXコンサルティングに従事している。