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第2回:そのWebサイト、”自己満足”になっていませんか?「顧客目線」でビジネスを成長させる方法

顧客に選ばれ、 事業を成長させるための UXデザイン戦略入門 第2回

作り手の「常識」は、顧客の「非常識」かもしれない

「この商品のこだわりを、もっと伝えたい!」「私たちの会社の歴史も知ってほしい!」 自社の製品やサービスに愛情があればあるほど、その魅力を余すところなく伝えたくなるのは、自然なことですよね。

しかし、少しだけ立ち止まって考えてみてください。その「伝えたいこと」は、果たして顧客が「知りたいこと」と一致しているでしょうか?

社内にいると当たり前になっている専門用語や業界の常識も、初めてサイトを訪れた顧客にとっては、意味の分からない外国語のように聞こえるかもしれません。私たちが「これが一番の強みだ」と思っているポイントが、顧客の抱える悩みやニーズとは、全く別の方向を向いている可能性もあります。

このように、作り手側の論理で一方的に情報を発信してしまう状態を、私たちは「自己満足なサイト」と呼んでいます。良かれと思って詰め込んだ情報が、かえってユーザーを混乱させ、サイトから離脱させる「見えない壁」になってしまうのです。

「顧客中心主義」がビジネスにもたらす絶大なメリット

では、どうすれば「自己満足」から抜け出せるのでしょうか?答えはシンプルで、主語を「私(企業)」から「あなた(顧客)」に切り替えること。つまり、「顧客中心主義」の発想を持つことです。

「私たちが何を伝えたいか」ではなく、「顧客は何に困っていて、何を知りたいのか」を起点に、Webサイトで提供する情報や体験を設計していく。この視点の転換は、ビジネスに驚くほどの好循環をもたらします。

  • 顧客満足度が向上する:
    自分の悩みやニーズを理解し、的確な答えをくれるサイトに、顧客は満足と信頼を覚えます。
  • コンバージョン率が上がる:
    顧客が求めている情報や商品をスムーズに見つけられれば、問い合わせや購入といった行動につながりやすくなります。
  • ポジティブな口コミが生まれる:
    「このサイト、すごく分かりやすかったよ」という満足感は、良い口コミやSNSでのシェアを生み、新たな顧客を呼び込みます。

企業の目標達成と、顧客の目的達成。この二つが同じ方向を向いたとき、Webサイトは初めて「成果の出る」強力な営業ツールへと進化するのです。

顧客と事業者の重要視するバランスが崩れている図

あなたの本当の顧客は誰?「ペルソナ」でターゲットを具体化する

「顧客視点と言っても、うちの顧客は老若男女さまざまだし…」と感じるかもしれません。そんなときに役立つのが「ペルソナ」という考え方です。

ペルソナとは、単なる「30代女性」といった曖昧なターゲット設定ではありません。あたかも実在する一人の人物かのように、年齢、職業、ライフスタイル、価値観、抱えている悩みなどを具体的に設定した、架空の顧客像のことです。

例えば、「子供向け知育玩具を探している、都内在住の会社員、田中由紀子さん」のように人物像を具体化することで、チーム内で「田中さんなら、どう思うだろう?」「この専門用語は、田中さんには伝わらないかも」といったように、常に顧客の視点に立ち返って議論を進めることができます。

ECサイト利用者のペルソナ例

顧客の行動を線で捉える「カスタマージャーニー」という考え方

ペルソナが顧客という「人物」を深く理解する手法だとすれば、その人が実際にどう行動するかを「時間軸」で可視化するのが「カスタマージャーニー」です。

顧客が、あなたのサービスを何で知り、Webサイトを訪れ、他社と比較検討し、問い合わせや購入に至り、さらにはその後のリピートに至るまで。その一連の行動と、各ステップでの感情(期待、不安、満足など)を一枚の地図のように描き出します。

これにより、「SNSで知った後、サイトに来てくれたけど、料金ページが分かりにくくて離脱しているな」といった、顧客の体験の流れ(=旅)の中で、どこがボトルネックになっているのかを客観的に把握できるのです。

ジャーニーマップ例の画像
カスタマージャーニーマップ例

まとめ:視点を変えるだけで、Webサイトは強力な営業ツールになる

今回は、「自己満足」なサイトから脱却し、ビジネスを成長させるための「顧客中心主義」という考え方についてお伝えしました。

  • 事業者の「伝えたいこと」と顧客の「知りたいこと」は違うかもしれない
  • 主語を「企業」から「顧客」に切り替えるだけで、ビジネスは好転する
  • 「ペルソナ」や「カスタマージャーニー」が、顧客視点を保つための強力なツールになる

視点を少し変えるだけで、Webサイトは企業の一方的な情報発信の場から、顧客との対話を生む最高のコミュニケーションツールに変わります。

では、具体的にどうすれば、私たちは顧客のことを深く、そして正しく理解できるのでしょうか? 次回は、そのための最も確実な方法である「ユーザー調査」について、詳しく解説していきます。


  
     

YOICHI TAKAYAMA

CEO/DIRECTOR

物事を整理して、隠れていた正解を見つけることに悦楽を覚えるタイプのUXデザインが大好きなWEBディレクター兼PM。 京都外国語大学外国語学部日本語学科卒。卒業後に上京し、システム開発会社を経てセガサミーグループに入社。コミュニティサイトやサービスサイトの企画立案、ユーザー調査、アクセス分析、ディレクション業務に従事した後、株式会社キャンビーザライトを設立。 設立後は、大小様々な会社のECサイト、サービスサイト、オウンドメディアなどのWEB制作やUXコンサルティングに従事している。